
先日、こんなご相談をいただきました。(要約してあります)
現在会社員として働いているものの、未経験からものづくりの道に進もうと思っています。ただし、大学や専門学校などで学ぶのは経済的にも心理的にも気が進みません。
工房に弟子入りしたり、アルバイトとして未経験で雇ってもらうなど、お金を稼ぎながら学ぶほうがいいんじゃないかと悩んでいます。
私は陶芸を始める際、会社を辞めて通信制大学で陶芸を学ぶという選択をしました。
だけど、未経験から「ものづくりを生業にしたい」と考える場合、ほかにもさまざまなルートが考えられます。
現時点で私が考えるのは、以下の5通りです。
- 会社員を続けながら週末教室に通って学ぶ
- 会社員を続けながら通信制大学で学ぶ
- 会社を辞め、工房に弟子入りして学ぶ
- 会社を辞め、アルバイトなどで雇ってもらい学ぶ
- 会社を辞め、全日制の専門学校に通って学ぶ
それぞれの技術習得パターンについて、考えられるメリットとデメリットをお伝えします。
1.会社員を続けながら週末教室に通って学ぶ
失うもののリスクがもっとも少ないのが、このパターンです。
今すでに何かしらの職についているならば、平日はそのまま仕事をする。そして週末や夜間にやっている教室で技術を学ぶという方法。
陶芸教室や料理教室など、そもそも働いている人向けに開催されている場合が多いので、土日や仕事終わりの時間帯に通うことができます。
一回あたりの受講料も、大学などに比べれば低く抑えられます。
ただし、一週間のうちに技術習得のために使える時間がとても少ないため技術の向上スピードが遅いというデメリットがあります。
教室の先生の技術に依存してしまう、という懸念もあります。
2.会社員を続けながら通信制大学で学ぶ
私が通っていた通信制大学は、学生のほとんどが仕事をしている人でした。
平日仕事をしている人でも通いやすいようにカリキュラムが組まれていますので、今の仕事を辞めずに新しいことを学びたい人にはぴったり。
大学ですので、その分野について基礎から体系的に学ぶことができるというメリットがあります。
一緒に授業を受ける人たちの作品にも刺激をもらえますし、先生から適切に講評してもらうことで自分の作品を客観視することもできます。
ただし、やはり学費の負担が大きいのも事実。
卒業までにかかる費用を計算し、それだけの蓄えを用意しておくことが大切です。
3.会社を辞め、工房に弟子入りして学ぶ
弟子入りしてみっちりその世界に入る、というのもひとつの手。
「弟子入りして何年も修行なんて必要ない」という声も聞きますが、今でも正攻法として弟子入りする方もいるようです。
弟子として働く期間は、給料がもらえる場合もあれば、ほとんどもらえない場合もあるため、給料より「職人さんの技術を踏襲できる」というメリットに重きを置くのがいいでしょう。
また技術だけでなく、その世界でどのようにものが売られ、どのような取引先があるのかといったことも知ることができます。
ただし、今は弟子をとるほどの余裕がないという工房も多いのが事実です。
どうしても師事したい人がいるなら、想いを持って交渉するのもアリかもしれません。
4.会社を辞め、アルバイトなどで雇ってもらい学ぶ
学びたい分野のアルバイトや「未経験OK」の会社で雇ってもらい、そこで仕事をしながら技術を習得するという方法。
弟子入りとは違い、他の仕事(雑務や事務)をする前提で雇ってもらうため、直接的に技術を身につけることは難しいです。
ただ、終業後に習ったり練習させてもらったりできる可能性もあります。
アルバイトで行う雑務も、独立したときには自分で請け負わなくてはならないことだったりします。
効率的ではないですが、収入を得ながらその分野に足を踏み入れることができる方法です。
5.会社を辞め、全日制の専門学校に通って学ぶ
陶芸では「訓練校」「陶工専門校」といった、その道の職人になるために通う専門学校があります。
陶芸以外でも、漆芸・染織・ガラス・和紙・竹工芸など、伝統工芸に関する訓練校は全国にあり、比較的安い学費で職人になれるレベルの技術を習得できるのが特徴。
「卒業後はその地域の工房に就職する意思がある」というのが入学条件となっている場合もあるように、独立するための学校というわけではありません。
また、入学のための選考試験があるため、応募したら必ず入学できるというわけではないので注意しましょう。
入学申し込みの日程が合って、学校に通う期間の生活費がまかなえるなら、技術を習得するのにはもっとも効率的な方法です。
習得スピードを早めるのは「プレッシャー」
新しい技術を習得する場合、お金をいただくというプレッシャーをかけることで習得スピードが早まります。
そのため、趣味として作る場合より、仕事としてお金をいただいて作る場合のほうが、ずっとずっとプレッシャーがかかり、そのぶん集中力が高まります。
スポーツでもそうですが、だらだらやった素振りより、実際の試合に出たほうが上手くなるのはずっと早いですよね。
ものづくりも同じで、高い集中力をもって作ったときと、特になんのあてもなく作ったときとでは、技術の習得に差が出るんです。
私も実際、陶芸を始めて早い時期に作品を販売し始めたため、周りの人より早いスピードで技術を上げることができました。
もし「できるだけ早いスピードで技術を習得したい」と思うなら、お金をいただき自分にプレッシャーをかけるのがオススメです。
今の状況からもっとも始めやすい方法を選ぶのがオススメ
未経験からものづくりを生業にするための技術習得法を5通りお伝えしました。
それぞれにメリット・デメリットがありますし、全ての方法が実現可能とも言えません。選びたくても、条件的にどれかひとつしか選べないかもしれません。
ですが、もしいくつかの選択肢を考えているなら、「今の状況から始めやすいかどうか」で選ぶことをオススメします。
たとえば、金銭面や今の仕事の退職時期、弟子入りしたいと思える人がいるかどうか、未経験で雇ってくれる会社のアテがあるかどうか。
このように条件から道を選ぶと「もっといい方法があるかもしれない」と考えてしまったり、「タイミングを見送ればよかったんじゃないか」と言われる可能性もあります。
でも、大事なのは「今やりたい」という想い。そしてタイミングだと思うんです。
私の場合、
- 人生を少しでも無駄にしないために今すぐ行動したかった
- 全日制の学校に通うのはタイミングが合わないと予想
- 通信制の大学の学費を払うことはできる計算だった
- 全日制の学校は諦め、通信制の学校のみで考えた
という理由から、通信制大学を選びました。
もちろん会社員のままでも通えるのですが、自分の仕事の状況を考えたら通信制でも学習のために時間を割くのが難しかった。
そこで会社を辞めて通信制大学に通い、空いた時間は陶芸教室や自宅で制作して技術を磨くという方法をとったんです。
このように、やり方なんて人の数だけあります。学校だっていろんなところがありますし、引っ越してしまえば選択肢は全国に広がります。
今の自分の状況だったら、どの方法がもっとも現実的か。それを考えて道を選ぶのが一番じゃないかと思います。
時間は有限です。後悔のない生き方を選びたいですね。
最新記事 by ユキガオ (全て見る)
- 自分の使いたいものを作る。これからの陶芸のテーマは「原点回帰」 - 2021年4月28日
- 子供が生まれたからこそ感じた「ものづくりの喜び」と「自分の好きなこと」 - 2021年1月9日
- 個展で展示した一輪挿しをネットショップで販売します。 - 2020年7月27日
- 母になりました。 - 2020年6月1日
- すぐに結果を出すことよりも、ずっと続けていくことを大切に。 - 2020年3月29日